夫婦火12

2/2
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
11の続き。 周りには、雑草が生えている。 これか。 見れば、古いが大きな焼却炉があった。 確かに、最近、使われた形跡は無い。 私は、しばらく、その焼却炉を眺めていた。 10、もう、お金の心配はしなくてよくなった。 贅沢品は数あれど、 やはり、お寿司だろう。 会社に勤めていた頃は、ちょくちょく行っていたが、 最近は、めっきり行かなくなった、 いや、 行けなくなった。 スーパーで巻き寿司を買って帰った。 「チヨ、今日はお寿司だよ」 妻を起こし、食べさせた。 「こんな贅沢な物、いいの?」 「いいんだ。さあ、いっぱいお食べ」 「うん」 妻は、おいしそうに食べていた。 私も食べる。 懐かしい味だ。 その味と同時に、 その時代が蘇る。 若かった、あの頃、 幸せだった、あの頃。 老後の心配なんて、全然していなかった。 13へ。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!