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「洋子のやつ、なんで大事なものを置いてくかね」
ソファーにもたれ、おやすみ前のコーヒーを飲みながら、親友の忘れ物のCDを聴いている美里。
完全な確信犯だな。私も巻き込むつもりで。……って、さっきから繰り返し聴いてる私も私だけど。
「East Top……か」
CDジャケットを手に取り、写真の男の子たちに目をやる。
若いな。などと思いながら、やはり美里の視線は、その中の一人に釘付けになる。洋子がまるで、少女みたいに目をキラキラさせながら、メンバーひとりひとりの名前を教えてくれたけど、それどころじゃなかった。覚えたのは、洋子一番のお気に入りだという“ドフン”って子と……。
「テヨン……君。あの時の“エンジェルスマイル君”は本当に君なのかい?」
人差し指の先で、ジャケットのテヨンを突きながら美里は思う。
まさかね~。他人の空似って事もあるし。
「でも……」
あの時、エンジェルスマイル君の隣にいた男の人が呼んだ名前は、確かに“テヨン”だった。
「……あ~もう! 考えない!」
自分に言い聞かせるように言い放つと、美里は冷めてしまったコーヒーを一気に飲み干し、ソファーに横になった。流れているEast Topの曲と歌声が、耳に心地いい。
「うん。確かにいい曲だよね」
そう呟くと、美里はそのまま深い眠りへと落ちていった。心のどこかで、夢が見られますようにと祈りながら。テヨンが出てきたあの夢の続きを……。
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