天使か悪魔か

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     *   *   * 洋子からのストーカー並の着信履歴に気付いたのは、美里が飲食店のパートを終えた、翌日の午後5時過ぎだった。 「お疲れ様でした。お先に失礼します」  パート先のおばさま達に挨拶を済ませ、携帯片手に従業員出入り口から外へ出たところで、美里は小さくため息を漏らした。 「ったく。留守電に用件も入れずに」   そうぼやきながら、リダイヤルボタンを押そうとしたところで、美里の携帯の着信音が鳴った。最近ダウンロードしたばかりの着歌。ディスプレイが、洋子からの10回目の着信を告げている。 「はいはい」  そう呟いた途端、背後から大きな声がした。 「その着歌! おー罠に掛かったね。ハマッタね! East Topに!!」 「洋子! もうビックリさせないでよ!」  ギョッとして振り返った美里の前に、満面の笑みを浮かべた洋子が居た。 「いや、これはその、前の着歌に飽きたから何となく……」 しまったと言わんばかりに、思わず言い訳っぽいセリフを口にした美里。自分でも何故こんなに焦っているのか分からないまま、続けた。 「てか、これじゃあんた本当にストーカーじゃん!」 「誤魔化さなくていいのだよ、美里くん。そっか~、気に入ってくれたんだ。じゃ、話は早い」  不敵な笑みを浮かべる洋子に、美里は嫌な予感がした。 「何?」  訝しげに訊ねる美里に、洋子が答えの代わりに差し出したのは1枚の紙切れ。これ~。と言って、ヒラヒラさせながら、また笑みを浮かべる洋子。 「だから何これ?」  美里がそう聞くと、今度は辺りを警戒するようにキョロキョロした洋子が、耳打ちした。それを聞いた美里は、即座に言い放った。 「は!? 何言ってんの! 無理無理、その日はフルタイムでパートだし!」 「まだ日にち言ってませんけども?」  洋子にそう言い返され、ますます焦る美里。 「いや、だから、その……」  最早、二の句が継げない美里を追い込むように、洋子が続けた。 「じゃ、そういう事だから。また連絡するよ。ット マンナヨ♪」  そう言い残し、軽やかな足取りで去っていく親友の後姿に、真っ白な羽と、真っ黒な尻尾が生えているように見えた。まるで天使なのか、悪魔なのか、見当がつかない。  無理よ、ムリムリ! とにかくダメなのよ! 「名刺交換会? East Topと? ムリムリ、無理~!」
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