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「で、今日は何?」
「それ差し入れ!」
テーブルの上に置いたケーキの箱を指差し、美里の質問など全く聞いていない様子で、洋子はバッグから取り出したCDをデッキにセットしている。
「な~に? 誰のCD? あんたの好きなSM〇Pの?」
「NO! 私、もうSM〇Pファンやめるわ! だって、出会っちゃったんだも~ん」
またかと思いながら、美里は無造作に置かれたCDジャケットを手に取った。そして、思わず息を呑んだ。
「この子って……」
「ん? 何?」
「いや、なんでも……」
そう呟いたまま、ただCDジャケットを呆然と見つめるだけの美里。写真の数人の男の子のうちの一人。まさかこの子に会ったことがあるなどと、洋子に言えない。
耳に入ってくるのは、聞き覚えのある曲。最近、よくCMで流れているものだった。
《East Top 日本デビューシングル ナウオンセール》
今朝も聞いたそのフレーズが、美里の脳裏を過ぎった。
「ねえ洋子……」
「いい曲でしょ!? 私、これからは彼らのペンとして、一生を捧げるんだ~」
「そう……、あのさ、この子の名前って……」
「あ~、この子はね、テヨンよ」
“テヨン” その名前を聞いて、美里は確信した。
やっぱり、そうだ。数ヶ月前に公園通りで出会った男の子。一緒に居た男の人に“テヨン”そう呼ばれていたもん。
“エンジェルスマイル君”と、その正体、そして今朝夢の中に出てきた相手。トライアングルの3点が繋がった。美里は、知らず知らずに高鳴る鼓動が、洋子にばれないよう注意をしながら聞いた。
「で、ペンって何?」
「あぁ、日本語で言うファンの意味よ」
「そっ……か」
この時、美里の中で、トライアングルの中身はまだ無色透明だった。
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