生きていたくない

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もうすぐ夏が来ることを、上からじわじわと降り注ぐ日差しが教えてくれる。 6月の日差しは、梅雨なんて忘れてしまったかのように急ぎ足で夏に向かっている。 自転車にまたがり、学校へ向かう私の横をそよそよと風がすり抜けていく。 「みきーー!!」 ふと後ろから呼ばれ、自転車のスピードを緩めた。振り返ると同じ大学、同じ学科の伊藤さやが同じく自転車に乗って近づいてきているところだった。 「おはよー。今日の2限のレポート終わった?」 「えっっ!?レポート!?あったっけ!?」 「・・・・あります。」 「・・・・・・・やってない*まー大丈夫、あの先生優しいから!単位くれるって!」 一体どこからそんな自身が湧いてくるのかわからない発言をしたさやは、またゆっくりと自転車を漕ぎ始めた。2人の間に生ぬるい風が通り抜ける。 私たちの所属している学部に自転車を止め、日差しから逃げるように建物の中へ入った。 「あー最近暑いね。汗やばいもん。」 「さやは化粧してるから大変だね。私は化粧しないから、その点は心配ないけど。」 階段を上り、授業のある教室を目指す。 「みきは化粧ほんとせんからな。でも日焼け止めはしっかり塗らないと、去年みたいにトレンカ焼けすんで?」 「う・・・。善処します。」 実は今年も既にトレンカ焼けをしていたりする。スカートを履くときにトレンカレギンスを履いているのだが、足の甲の露出部分に日焼け止めを塗るのを忘れ、半分だけ焼ける、という恥ずかしい焼け方をしてしまうのだ。 「あっつー。エアコン付いてへんやん。」 「窓開けよ、窓。これは暑いわ。」 教室に入るも、まだ人は少なかった。エアコンもつけず、窓も開けないなんて、我慢大会でも行いたいのだろうかと疑問に思いつつ窓を開けてその傍の席に座った。勢いよく入ってくる風で汗を冷やしながら授業の準備を始めたとき、横からさやが覗き込んできた。 「・・・何?」 「んー?なんか今日目が二重やなーって。いつもよりくっきりしてんで。」 そんなにジッと見られると、少し居心地が悪いんだけど、と軽く笑いながら携帯を取り出してメールが来てないかチェックした。
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