元気が一番

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6月の雨はじめじめしている。 春日未来は一つ咳をした。風邪だ。昨日あんなにはしゃいだのが悪かったのだろう。 針がカチカチ鳴る。マーブルチョコレートの模様の時計。もう思い出せないほど前のものだ。それをじっと見つめる。 チャイムが鳴る。ハッとしたがすぐ近くの郵便局の就業の合図だった。目をつむると泥だらけ沼で遊んだ光景が浮かんできた。 星「どっぼ~ん」 振り替えると友達の箱崎星梨花が民家の隣の沼から頭を出していた。 未「制服のままで遊ぶなんて…クリーニングどうするのよ」 星「冬服だからいいもん」 もう一度民家のほうをみるとなんだかボロくて人がいる気配が無い。けれど物が多く居住スペースもある。 星は泥だらけになりながら泳ぎまくっている。 未「私も入りたいけど、制服はやだし…そうだ!体操服がある」 バックから取り出すと公園のトイレへ行った。そこで着替える。元の沼池へ戻る。 星「未来ちゃん?どうクロール」 半分溺れながら進んでいた。身体のバランスがボロボロ。 未「なんか違う気が」 水泳は得意では無い。とくにバタフライは泳ぎ方も不明だ。 星「もうすぐ体育で水泳始まるし下手な泳ぎをすると内申に響いちゃうよな~」 未「それはまずいな」 星「今から練習しよ」 未「賛成」 泥の中にまみれながら懸命にクロールをやった。未来と星梨花の交互に採点して悪いところを直した。 星「これで水泳で一番になれる」 未「うん」 ちなみに何か理論があって教えあったのでは無い。適当だ。 星「そういえば忘れてることないーーーえいっ」 泥が飛んできた。まん丸のかたまりの。 未「こっちも」 団子を投げ返す。 こうして死闘は3時間に及んだ。もうすっかり陽は沈んでいた。6時になっていた。 閉じた瞳を開いた。今のは夢では無く実際に起きたことだ。 枕をどかしてベッドから起きて、テーブルの上の冷えたココアを飲んだ。
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