【証(あかし)】絵師様⇔作家SS サークルイベント作品 

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【証(あかし)】絵師様⇔作家SS サークルイベント作品 

黒吉(絵師様)[link:crea_u?c=U2FsdGVkX18xXOTc5MDkyNtxXcHbuSa3mLIuc2jQMwIQE1]   × 碧海 橙空 コラボ作品 タイトル 「証(あかし)」 シャキリ シャキリ  髪を切り落とす音が響く。 俺の髪を切るのは、神門 紫苑(ミカド シオン)だ。 俺の教育係であり、 兄である存在、 そして、かけがえの無い愛おしい人。 鷹ノ宮家を離れ、彼のもとで帝王学を学ぶために同居をし、6年の月日が経った。 明日、我が家(鷹ノ宮家)へと舞い戻る。 今日が最後だと思うと、狂おしいほどの彼への想いが込み上げる。 「瑠維(ルイ)の髪、大分伸びたな」 感慨深げに、さらさらと流れる栗色の髪を、紫苑が見つめた。 艶やかな髪の房を、櫛で梳いては銀色の刃先で摘み取る度、 愛おしげに淡い桜色の唇を髪に押し付けている。 羽根の折れた小鳥を両手で優しく抱き留めるように、 そっと桐の小箱へと移していく其の姿を、暫し大鏡越しに眺めていた。 俺の視線に気づくと 潤んだ瞳で微笑み、首筋に甘いキスを落とす。 シャキリ  シャキリ 俺の髪を断つためだけに作られた剪刀が、 ”これからは、一人で生きるのだ” と、告げている。 紫苑の手を離れ、自分の頭で全てを考え、自分の足で歩くのだ。 鷹ノ宮家の仕来り 女として生きた18年間を終え、 俺は鷹ノ宮家の跡取りとして、鷹ノ宮財閥の指揮を取る。 男女の差異など無く、王として産まれ落ちた時から 俺の未来は決まっていた。 「ずっと、お前の傍に居るから」 愛おしい男が、慰みの言葉を告げる。 生涯を共にする相手を選ぶ権利など、俺には与えられていなくて、 より鷹ノ宮財閥が大きくなる男と共に、未来を歩く。 其の腕に抱かれる事は、もう、二度と無い。 桐の箱に、たっぷりと詰った俺と紫苑との日々の証に封をした。 日焼け痕の無い真っ白な俺のうなじを、指先で愛撫する紫苑を見上げる。 窓から吹き込む桃色の花びらが、柔らかな風に乗り俺達を包み込んで舞踊った。 それは、餞(はなむけ)となるラストダンス。 ・・離れたくない。 紫苑を愛している。 喉元まで、出掛かった言霊(ことだま) 紫苑の頬を流れる一筋の雫を指先で掬い取り、口に含んだ。 甘く潮の香りのするそれは、アイツから貰う最後の愛の証。 想いを胸の奥へ閉じ込めて、愛を憶えた彼の唇にサヨナラを告げた。 (TBC)image=471687975.jpg
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