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「二人とも…オーラがピンクだ…」
不敵な笑みを浮かべる俺たちに、のび太が横槍を投げるかのように呟いた。
説明が遅くなったが、のび太の言う“オーラ”とは、その人の霊的エネルギー?のようなものが感情に合わせて身体に現れ出てくるらしく。(もちろんそれはのび太にしか見えない)
色によって大きくそれぞれの感情が分かれるらしい。
通常時のオーラは青色のようだが、例えば、オーラが赤色なら頭に血が上っている時、オーラが茶色ならトイレがしたい時、など様々だ。
そして、先程のび太が言ったピンクとは、話の内容でも分かると思うが、簡単に言うなら欲望だとか邪念だとかそんなものだ。
つまり、非合法な悪巧み。これが一番ピンとくるのではないだろうか。ピンクだけにな。
「…のび太も見にくるよな?」
少し気まずい雰囲気を出しながら、橋本がのび太の方に顔を向けて問う。
「え?いや…僕は…」
「おいおい、ここまで来て何言ってんだ?」
「いや、でも…」
「いいから行こうぜ!」
困惑気味に答えるのび太に痺れを切らした橋下は、半ば強制的に説得し、手を引いた。
俺たちのメンバーの中でも中立の立場にいるのび太を橋本が連れて行くということは、間違いない。
のび太を共犯者にするつもりだ。
俺は橋本の策を苦笑いで見届けると、二人の後ろについて行く。
当然のことだが、先程俺が心の中でついうっかり言ってしまった、とても上手い“掛け”。
それは、誰に聞こえることもなく、俺の消化器官へと消え失せた。
「ピンクだけにね!」
どうやら身体は嘘をつけないらしい。
皆に知ってほしいと思う願望は、俺の内蔵を逆流し、口からその言葉を漏らしてしまった。
「は?急にどうした針川?」
「大丈夫?頭とか。」
動かしていた足を止め、橋下とのび太が硬直した身体で後ろにいる俺の方へと振り向く。
「あ、いや。うん、ごめん。
……なんでもないんだ。」
ここにいるのが、橋下とのび太だけで良かった、とつくづく思った瞬間だった。
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