平穏

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俺はのびたの方へ向き直ると、すぐにその答えを訂正した。 「いいか。のび太。 俺はパンツ一丁で修学旅行になんて来ないし、パンツ一丁で徘徊なんてしない。寧ろ、普段パンツなんて履いてないんだ。」 「え?つ、つまり…全裸で来るってこと?」 どうやらのび太には俺の言い分は難しかったらしい。 彼はとんでもない間違いを脳内妄想させていた。 俺はすぐにでもそれのツッコミを入れたかったが、赤面するのび太が少し可愛いと思ってジッと見つめる。 「針川…オーラがピンクだ…。やっぱり全裸で来るんだね!?」 「へ?」 「仕方ないよ、のび太。 彼は、全裸になることでしか本来の自分を出すことが出来ないのだから…」 「え!?それじゃあ、僕たちが今まで一緒に過ごしてきた針川は偽物ってこと!?」 「残念だが…。」 「そんな…」 「いやいや、ちょっと待てよ!」 俺を押しのけて勝手な想像をし始めた二人を俺は怒鳴りつけた。 いつもの事なのでもう慣れてはいるが、今回の想像はおもいっきり否定したい。 俺は細い眼を大きく見開き、のび太に視線を向ける。 「まずのび太、俺が普段パンツ履かないって言ってんのは服を着用の状態でノーパンって意味だ!何故、パンツ一丁の状態からパンツを捨て去った!?」 のび太へのツッコミを終えると、すかさず今度は江成くんのいる方向へと視線を動かしながら「次に江成くん!」と叫んだ。 叫んだ。のだが。 そこにいる筈の江成くんは、忽然とその場から姿を消していた。 それがどういう意味なのか。 言わずとも分かる。 逃げたのだ。 「…って、どこ行ったあぁぁ!!」 勢いを消しきれない俺のツッコミが、そこにはいない江成くんのいた場所に、行き場をなくしてこだまする。
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