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「おっ、針川、放課後も元気ハツラツだね~」
俺のツッコミが聞こえていたのだろう、新たな悪の手先が陽気な声で俺たちに絡んできた。
「…うるせぇよ。」
俺は訝しげな表情をしながらそいつに目を向ける。
「また江成くんにからかわれたのか?」
その台詞を吐く表情と声のトーンからして、心配や同情をする様子もなく、どうやら俺を笑いに来たようだ。
そいつーー橋下亮丞
(はしもと りょうすけ)は、口元をにやつかせながら言う。
「本当に、あの人はどうにかしてほしいんだが…。マイペースというかお気楽というか、ドSというか…」
俺は、橋下が期待しているであろう俺の嘆きを、その通り浴びせた。
「あっはは。まぁ、江成くんのアレは病気みたいなもんだからな。治んねぇよ。」
「そうかね~?」
俺は橋下のその笑みを含む冗談めいた言葉に、些か不満気味に、疑うような素振りで返答する。
「…まぁ、お前が望むのなら江成くん崩しに協力してやらんこともないが。」
「はぁ?そんなこと出来るはず…」
言いかけてやめた。
俺も成し遂げたいその野望というか、邪念だが、相手はあの江成くんだ。
そうやすやすと崩れる筈がない。
しかし、橋下は自信満々に、且つ、また同じように笑みを含む表情で俺への協力を提案してきた。
その表情から察し、俺は出来るはずもないその提案を否定するのをやめたのだ。
「もしかして…アレを使うのか…?」
今度は逆に、俺が橋下に期待を持ちながら恐る恐る尋ねる。
きっと、その時の俺は橋下と同じように、口元にいやらしい笑みを浮かべていただろう。
「あぁ。それしかないだろ?」
橋下の表情は今日一番の笑い顔を見せた。
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