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「本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫だって!」
二人の男が暗がりの林の中、木々を掻き分けて歩く。
人里離れたこの場所は、辺りも静かで二人の声以外は何も聞こえない。
だが、夏も終わりかけの9月のこの時期だ。
虫の鳴き声はおろか、動物の鳴き声も聞こえないのは妙に頭を引っかかった。
不安に駆られた男はもう一度尋ねる。
「本当に大丈夫なのか?」
「あっはは!ホント怖がりだよな、お前。」
もう一人の男は、俺の心配など他所に茶化しながら前を歩いていく。
昔からこいつはそうだった。
何でもかんでも楽観的に物事を考える。
今まで、何回俺がその所為で苦労してきたことか。
今回も同じだ。
何の警戒もなしにどんどんと、この坂になってる林を登っていく。
暗中、手元に持った懐中電灯の光だけを頼りに前後左右何も見えない状況で躊躇なくあいつは登っていく。
近くに物凄くヤバイ心霊スポットがあるから行こうぜ、なんて誘い受けなきゃ良かった。
俺は溜息を吐いて、そいつに付いていく。
何の疑問も抱かずに付いていく。
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