プロローグ

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俺は震える体を抑え、倒れている人体に眼を向けた。 その人体は、その場から動かずにずっと丸まっている。 正に異様だ。 こんな場所で普通の人間が寝ているわけが無い。 嫌な予感はしている。 だが、本能がその人体を見に行かなくてはならないと囁いていた。 本心とは裏腹な答えを出す本能に身体が引っ張られ、俺はその人体へと近付く。 一歩。 二歩。 間隔が狭まる毎に心臓の鼓動も早くなっていく。 俺は意を決してその人体に向かって走りだした。 あれを見たら帰る。 あれを見たら帰る。 あれを見たら帰る。 そう唱えながら走った。 「うわっ!」 その途中、砂利に大きな凹みがあり、俺は大きくつまづいて転倒する。 良いのか悪いのか、俺の身体は人体の間近で倒れて視界をその人間の姿で一杯にした。 すぐに飛び起き、距離を置く。 そして冷静に考えた時、気付いた事があった。 俺はつまづいてもまだ持っていた懐中電灯をもう一度その人体に向ける。 さっきの距離では分からなかったその事に、俺の心臓の鼓動は勢いを増した。 「はぁ…はぁ… こ、この…こいつの服…」 黒のタンクトップにジーパン姿。 それは、さっきまで一緒にいて喋っていたあいつと同じ服装だった。 「なんで…だって…あいつ…さっきまで俺の後ろにいたのに…」 不気味な出来事に口が狼狽え、背中に寒気が走る。 気付けば大量に汗が流れていた。 ゆっくりとそいつへと近付き、丸まった身体を震える手で起こしてやる。 「おい…お前、大丈夫か…?」 返事はない。 「なぁ、悪い冗談ならやめてくれよ」 動かない。 「おいって!」 いい加減我慢出来なくなった俺は、そいつの身体を無理やり起こした。
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