プロローグ

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「へ…?」 仰向けになったその人間を見て困惑する。 倒れていたそいつは、確かにさっきまで一緒にいたあいつだった。 いや、あいつだと思う。 自信を持って言えない。 何故なら、そいつの顔はもう。 ほぼ原型を留めて居なかったから。 目玉は潰され、鼻は骸骨さえ見えるまで剥ぎ取られている。 そして、何よりも決定的なのが… 口を耳元まで裂かれていることだった。 俺は込み上げて来る老廃物を抑えきれず、そいつの顔の真横にぶちまける。 どうしてだ? どうしてこうなった? もしかして…最初からこいつは死んでた? だったら、さっきまで一緒にいたあいつは誰だ? 何故、こいつは口を裂かれている? 頭の中がグチャグチャになる。 吐いている間中、疑問だけが頭を巡っていた。 そして、行き着く答え。 「逃げなきゃ」 逃げなければ、こいつと同じように殺される。 俺は、俺は… 死にたくない。 こんな死に方なんてしたくない。 不意に大粒の涙が恐怖から頬を伝い止まる事なく流れていく。 真っ直ぐ林を見る歪んだ視界に、一つの影が見えた。 その影は、こちらへとゆっくり近付いてきている。 観察なんかしている場合じゃない。 逃げなきゃ。逃げなきゃ! あいつが犯人なんだ! 俺の友達を殺した犯人! 仇は打ちたいが、あんな殺され方をした友人の顔が脳内にフラッシュバックすると、逃げる意思を格段に飛躍させた。 目の前の影とは逆の方向に急いで身体を転回させて走り出す。 だがその直後、俺の身体は障害物にぶつかり、反動で尻から地面へと叩きつけられた。 おかしい。こんな所に障害物なんてなかった。 俺はバッとぶつかった位置に眼を向けて確認する。
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