103人が本棚に入れています
本棚に追加
「へ…?」
仰向けになったその人間を見て困惑する。
倒れていたそいつは、確かにさっきまで一緒にいたあいつだった。
いや、あいつだと思う。
自信を持って言えない。
何故なら、そいつの顔はもう。
ほぼ原型を留めて居なかったから。
目玉は潰され、鼻は骸骨さえ見えるまで剥ぎ取られている。
そして、何よりも決定的なのが…
口を耳元まで裂かれていることだった。
俺は込み上げて来る老廃物を抑えきれず、そいつの顔の真横にぶちまける。
どうしてだ?
どうしてこうなった?
もしかして…最初からこいつは死んでた?
だったら、さっきまで一緒にいたあいつは誰だ?
何故、こいつは口を裂かれている?
頭の中がグチャグチャになる。
吐いている間中、疑問だけが頭を巡っていた。
そして、行き着く答え。
「逃げなきゃ」
逃げなければ、こいつと同じように殺される。
俺は、俺は…
死にたくない。
こんな死に方なんてしたくない。
不意に大粒の涙が恐怖から頬を伝い止まる事なく流れていく。
真っ直ぐ林を見る歪んだ視界に、一つの影が見えた。
その影は、こちらへとゆっくり近付いてきている。
観察なんかしている場合じゃない。
逃げなきゃ。逃げなきゃ!
あいつが犯人なんだ!
俺の友達を殺した犯人!
仇は打ちたいが、あんな殺され方をした友人の顔が脳内にフラッシュバックすると、逃げる意思を格段に飛躍させた。
目の前の影とは逆の方向に急いで身体を転回させて走り出す。
だがその直後、俺の身体は障害物にぶつかり、反動で尻から地面へと叩きつけられた。
おかしい。こんな所に障害物なんてなかった。
俺はバッとぶつかった位置に眼を向けて確認する。
最初のコメントを投稿しよう!