プロローグ

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「あ…あ、ぁ……」 そこにあったのは、案の定障害物などではなかった。 俺は唸り声をあげて、ぶつかったものを見上げる。 いつの間にか落としていた懐中電灯は、偶然にも地面の大きな石に傾けられ、その影の顔をスポットライトのように照らし出していた。 「お、まえ…は…」 血の色のヒールとワンピースを着たそいつに、最早人間と呼べる気配というものはない。 そして、大きなマスクをしたそいつを、俺は何者か知っていた。 「口裂け…女…!」 骨ばった手に持ったハサミをかざしてそいつは近付く。 「いやだ…嫌だ…嫌だっ! 死にたく……ない……」 溢れる涙はもう止まらない。 震える身体はもう止まらない。 口裂け女は大きく裂けた口を開いた。 『ワタシ……キレイ?』 「うわあぁぁああぁぁあ!!!」
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