平穏

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「針川きゅん、明日はどんな格好で来るのかな?たーのーしーみー!」 騒ぎの中に乗じて、俺の目の前にとある人物が姿を現した。 「江成くん…どんな格好も何も、明日は制服だろ?」 「え~、そーだったっけ~?」 このテンションが上がりすぎてキャラの崩壊した人物の名前は、江成 棟緒(えなり むねお)。 彼は… <いつもは知的でクールでイケメンでハンサムで学園のアイドル的な存在なのだが、今はちょっと天然っ子になっちゃっているのだー☆> おい、勝手にナレーションを書き換えるんじゃない! <だって本当のことだもん?> いや、半分以上捏造だったね! <え~、そーだったけ~?> 以上の通り、彼は訳あって“読心術”が使える特殊能力者だ。 その訳というのが… 「ねぇ、針川… 明日パンイチで来るって本当なの?」 ちょっと、ごめんなさい。 なんか隣の方から変な台詞が聞こえたのでこっちから聞くね。 「おい、のび太! 誰がそんな事を言っていた!」 「江成くんが…」 即座に前を向いて江成くんを睨みつけると、彼はサッと顔を横に向けて口笛で校歌を吹き始めた。 その余りにも分かりやすい誤魔化し方に、呆れてものも言えない。
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