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私は立ち上がって優姫の席に行くと、すでに彼女は数人のクラスメイトに囲まれていた。
「姫、お願い!小テスト見せて!」
手を合わせて頼んでいるショートカットの女の子は山崎さんだ。
彼女はテスト前もテストの後も、いつも優姫を頼っている気がする。
私も山崎さんのことを言えた義理じゃないけどね。
「いいわよ。はい。」
「すごい…!姫ったら満点じゃん!ありがとう!すぐに返すね!!」
「いいのよ。困った時はお互い様じゃない。」
「姫、次私にかして!山崎さん、次私だからね!」
あっという間に優姫の答案用紙を巡る順番待ちができてしまう。
彼女達は一通り順番が決まると自分の席へと帰っていった。
おかげでゆっくり話ができるとばかりに、私は優姫に話しかける。
「よっ、人気者。優姫、満点とかすごいじゃん。」
「そんなことないわよ。勉強しただけだもの。」
謙遜しながらもにっこりと微笑む優姫。
可愛くて頭も良くて、優しくて、クラスの人気者。
スポーツは得意とまではいかないけれど、人並みにできる。
彼女こそ才色兼備という言葉に相応しいと思う。
もちろん、幼馴染の贔屓目で言っているわけじゃない。
実際に、傍にいて羨ましいくらいなのだから。
「ところで、梓は再テスト大丈夫だったの?」
「いや、それが2点足りなくって…再テストになってしまって。ごめん、教えてくれる?」
「もちろんよ!2点足りないだけなんて惜しいじゃない。
大丈夫。梓ならきっと次は満点よ。」
優姫は私の手をとってギュッと握り締める。
また、次の授業を告げるチャイムが鳴った。
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