王子様なんていない

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「ほんっとしつこいよねぇ、横西先輩。姫が好きなら自分で告ってこいって感じ。」 更衣室で制服から弓道着に着替えながら真由美が言う。 更衣室には私達しかいないので、聞かれる心配は一応ない。 「横西先輩ならいけそうだと思うんだけどねー。梓にすがっている先輩はどうかと思うけど、普段の先輩はめっちゃカッコいいし。お似合いだと思うけど。 」 「うーん…。でも、無理だと思う。」 確かに、一般的に見れば横山先輩はカッコイイ。 実際にモテているという噂も聞く。 だけど、カッコイイとか、頭が良いだけでは優姫の心を掴むことはできない。 「えー。横西先輩が無理とかさ…姫ったらどれだけ理想高いの。エベレスト級じゃん。」 「うーん。理想、とかじゃないんだよ、優姫の場合。」 「じゃあなんなわけ?」 「えー…しいていうならば王子じゃないってところ?」 そう、それが先輩に根本的に欠けているもの。 「え、それってさー。姫の冗談でしょ?」 いや、それが本当なんだよ。 しかし、私の心の内なんて全く知らずに真由美はおかしそうに笑う。 「そんなの真剣に真に受けてる人いないから! ねぇ、梓は幼馴染だから何か理由知ってるんじゃないの? 長年片思いしている人がいるとかさ。」 確かに王子様を待つことは長年の片思いに等しいですけど。 しかも今日の朝、相手が見つかっちゃいましたけど。 でもこれ、言っても信じてもらえないだろうなぁ…。 ふざけないでよ!なんて言われそう。 私が真由美にどう答えればいいのか考えていると、「一年、集合!」の部長の声がして二人とも慌てて更衣室を飛び出していく結果になった。 そのおかげで私は質問に答えずにすんで、ホッと胸を撫で下ろしたのだった。
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