0人が本棚に入れています
本棚に追加
「……」
ロボットのように首をギギギ、と鳴らしながらドアを破壊した者を視界に入れる。
戦慄が、背筋を駆け抜けた。
目の錯覚だと信じたい光景……。自慢の茶髪が何の動力か不明だがゆらゆらと空中で揺れ、こちらを射貫く瞳は狂気を物語るかの如く真っ赤。表情は言わずもがな憤怒そのもので、体制は自慢の美脚を前に振り上げた状態。蹴破ったと完全に証明しているね。
もう、何なの。アンタ誰ですか?
ドアの修理費用その他様々な事が頭によぎりショート寸前の俺に、彼女は床を抜かんばかりの勢いで足を思い切り降り下ろし、数歩で目の前までやって来ると。
「人が呼んでるんだから……返事しなさいよこの馬鹿!!」
耳鳴りが脳内全体に響き渡る程の大声を至近距離で放つと、直ぐ様俺の胸ぐらを掴み上空に持ち上げ左右に揺らし始める。
何のこっちゃ、と状況把握出来ず振り子のように揺らされる俺は、絞められた喉や先の大声で受けた脳へのダメージが強すぎた為に、半分昇天仕掛けていた。
「コラ! 何とか言いなさいよ! この……――」
言いたい放題やりたい放題ハハッて感じの彼女が突然動きを止め、一転して電池が切れたおもちやのように静かになった。
だが俺からしたら耳鳴りが消えて何とか思考が出来る状況であり、依然として首は絞まっている為に全く余裕が無い。仕方なく視線を向けて彼女に合図を送るのだが、何でか知らないがこちらの顔面を見ることなく、自らの正面を向き微動だにしない。何でだ!
「――っ! ――!?」
掠れた息を吐き出しながら、俺はここでようやく己の身体の状況を思い出していた。
コイツが入ってくる前に“上着”だけは着替えたが、確かズボンは下ろしかけてそのままだった筈。そして掴みあげられたことによりズボンから手を離してしまった。詰まるところ、今の俺は下の方が「見せられないよ!」的な状況。
「――ッ」
彼女からの見えない何かが膨れ、ついでに息が思い切り吸われる、地獄へのレクイエムを耳にしつつ俺は思った。
終わった――
最初のコメントを投稿しよう!