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「ふ~ん。それでわざわざここに来たのか」
「……」
黙ってこちらの返事を待っている少女を見つめて、頭を掻きながら俺は視線を逸らし。
「いいよ。気にすんな」
ぶっきらぼうに言い返していた。つーか、律儀だね。そして中々に思い込みの激しいやつだな。
「……でも」
「お前さ、何か勘違いしてね?」
未だに頭を下げている少女に俺は続けて言葉を放る。
「悪いのは俺やお前じゃなくて、事故を起こした運転手だ。責任は無いんだぞ?」
俺達は巻き込まれた訳で、実質は被害者なのだ。そもそも起因するものが無かったら、今現在ここでこうしてはいない。
「だから、気にすんな。謝る必要ないよ」
手をヒラヒラさせながら、帰った帰ったと苦笑いしつつ促す俺を。
「……」
顔を上げた少女は、何だか釈然としないと言わんばかりの表情で、黙って見つめてくる。
……あんまり見ないで欲しい。何だか居心地が悪くなる。つーか帰れよ。用事は済んだろ。
「――でも」
何時になったら出ていくかな、と困惑する俺に向けて。
「アンタのしたことは忘れない」
ビシッと人差し指を突き出し、険しい目付きで言い放った。
「アンタが気持ち悪い視線と言葉その他諸々を私にしたことは」
「……ちょっと待て」
何か話がおかしくなってきたぞ。その他諸々って何だ、オイ。
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