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先手必勝。たとえ少女がここで抵抗した所で、しょせんは個人。公的機関である病院に敵うはずが無い。
「はぁっ!? 何言ってんのよ!」
予想外の行動に慌てふためく少女へ向け、今度こそ俺は手を振りここから立ち去るよう求めた。
もちろん表情は満面の笑みを。ついでに振っていない方の手で、親指を立ててグッジョブ。
「あ、アンタねぇ~――」
沸点を通り越して完全にキレたか、顔を真っ赤に変えて俺に向かい腕を伸ばそうとした少女は。
「大丈夫ですか!」
「あっ――っ、覚えてなさいよ」
病室にやって来た看護師さんから何かを言われる前に、捨て台詞を吐いてその場から立ち去った。
「ありがとうございました。もう大丈夫です」
わざわざ駆け付けて下さったのに、あれ? と病室内で立ったままの看護師さんにお礼を言い、何とか事なきを得た。
「……はぁ」
静まり返った病室。再び一人だけとなった瞬間、図らずも溜め息が出てしまっていた。
危なかった。何はともあれ今回は無事切り抜ける事が出来たわけで……しかし、完全に終わったわけでもない。
恐らくあの少女はまた来るな。明日すぐ来るかは別として、ほぼ間違いなく姿を現す気がする。
もし、またやって来られたらもう勝ち目が無い。二度と会えない、そういう風にしないと駄目だ。
だからといって病院にこれ以上の迷惑は掛けられないしな。さて、どうするか……。
「――仕方ない」
お世話になるのは御免被りたい。だがアイツ以外、この状況を脱出させてくれそうな奴はいないし。あーあ……。
鬱々とした気分となりながらも、携帯を手繰り俺はアイツに連絡を取る。
「もしもし?」
「おう、俺だ。実は――」
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