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「待て――!」
「誰が待つか――!!」
大学構内を走り抜けて、校門を通り狭い路地を必死に走る。
現在は午後四時過ぎ。上り電車到着まで、後残り十五分といったところか? 畜生!
足を縺れさせながら懸命に走り道路を横断。その先に見える駅へ何とか駆け込んだ。
駅員さんに定期を提示してようやく構内に入ると、階段を下りてホームにあるベンチに腰掛け一息ついた。
ああ……今日は厄日だ。畜生。
心中で毒づきながら、俺は深く呼吸を続けて乱れた息を整える。
今日は教授に就職活動の報告をしに来ただけだった筈なんだが。どうしてこうも災難を――なんて考えている間に複数の足音が。
「……うげっ」
段々とこちらに近付きつつあるそれに、すぐさまその場から立ち上がって忙しなく辺りを見回す。
もう来やがったのかよ……! 一体何なんだアイツは!
慌てに慌てつつ、階段とは別のホームへの侵入口であるスロープ(何故設置されているのかは不明)を駆け上がる。正直しんどい。
恐らく奴は階段からホーム内に入るだろうから、その隙にココを通って外に逃げれば……。
なんて、比較的安易な気持ちで進んでいた為かは知らないが。
「あっ! 見つけたー!」
「なにぃぃぃぃ!?」
スロープ側からこちらへ、奴の友人らしい少女二人組が勢いよく向かって来ていた。んなバカな。
何とか足を踏ん張って急停止。踵を返してホームに向かおうと、してはみたが。
「見つけたわよ!」
「うぉああああ!」
探していたのだろう。肩で息をする奴の姿が目の前にあった。
進路も退路も塞がれてしまった俺。最早出来ることは無い……。
「……何だよ」
心の奥底から、声を張り上げて叫んだ。
「何なんだよお前は!!」
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