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七月五日。梅雨の中にありつつ晴れ間を覗かせた空を嬉しく……はたまた恨めしく思う現在、俺は大学で教授に就職活動の状況等を報告に来ていた。
「それで、どうだい。順調かい」
「いや~、中々に厳しいですね。どれも一次で落とされるばっかで落胆してます」
研究室のソファーに腰掛けて、俺は苦笑いで教授を見る。実際、かなり厳しい。
上向かない景気に未曾有の災害と日本はかつて無い危機にある。さらに消費税増税やその他国民に知られず通っていく法案の事など不安要素も多く、雇用については二の次とも思える状況だ。全く、やってられない。
「そうか。だけど落ち込んでいる暇は無いよ。積極的に取り組むかどうかで就職率は大いに変わる。君が夢を掴みたいなら、尚更ね」
「……はい」
不敵な笑みを浮かべる教授に、溜め息をつきながらも俺は笑みを返していた。
この人が考えることはいまいち不透明なんだが、告げてくる事はいつも正しい。これまでも大いに行動の指針となる言葉をくれた。そして、今も。
「ありがとうございます。教授」
「どういたしまして」
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