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「そして今に至る、と」
「何言ってんのよアンタ!」
「うおっ、バカやめろ! ズボン脱げるだろ!」
回想が終わってただいま、結構必死にスロープの間にある外壁に登ってしがみついている状況だ。
諦める気は全く無いみたいで、少女達は俺の足やらズボンやらを引っ張って引き摺り下ろそうと、その魔手を伸ばしている。
正直言ってかなり恥ずかしい。けれども背に腹は変えられない。ここで屈したら俺の人生は見事に地獄行き決定なのだ。
というわけで、何とか打開策を見出だそうと必死なんだけれど、如何せん良い案が見つからない。
女性に関し無知な俺は、先程のお世辞(そう思い込んだ)くらいが唯一のご機嫌の取り方だとして、それ以上を知らない。
上に逃げようにも壁しか無く、完全な袋小路。もはや悪あがきの状態だ。
そもそもどうしてこうなった。でもまあ考えてもしょうがない。今は取り敢えずこの状況を脱する手立てを考えなければ……。
「ちょっと、アンタ! いつまでしがみついてんのよ! いい加減諦めなさいよ!」
「んなこと出来るかよ。ほらさ、有名な格言があるだろ。諦めたらそこで試合終了ですよ、ってさ」
「ウザいわ!」
「何故に!?」
安○先生の有り難いお言葉を、お前はウザいわ! の一言だけで一蹴すんのかよ!
「この鬼畜! 人でなし!」
「アンタに言われたくないわ!」
駄目だ、切れ味が鋭すぎるわい……。ワシにはとてもじゃないが相手にならんよ。
と、ショボくれた老人のごとく頭を振っていると――――って、アレ?
「やっと諦めたのね!」
腕が、しがみついた際の活力源が限界に……! ま、マズイぞ!
「違うわ! 誰が降参するか!」
苦し紛れに叫んだのが後押しとなったらしく、そこからは何とも呆気なかったよ。我ながら。
「さっさと――」
「降りて――」
「――こいや!!」
「うわぁぁぁぁぁ!!」
三人がかりで引き剥がされて、とうとう俺は自分との戦いに負け地獄にたどり着いたのだった。
そして悲しみが始まる――
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