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「それで? 何か言い残すことはあるかしら」
スロープから引きずられ、俺は駅の外にある樹齢何年かの大木に縛り付けられていた。
分かり易い程の公開処刑。皆がこちらを不審そうに見ています。
そうか、俺はこの場で社会的に抹殺されるのか。
「うーん……。そうだな。しいて言うなら――」
「やっぱ言わなくて良いよ」
「オイ!」
最後の言葉も言わせてくれないとは、絶対コイツら性格悪いな。
何て被害妄想の塊みたく考える俺を見下しながら、奴は静かに、告げた。
「逝きなさい!」
手加減は皆無らしいな。ったく……。
死刑を告げる裁判長のような重々しさで放った言葉と共に、俺を死に導く鉄拳制裁を放とうとした少女――もといマセガキ共は。
「ゴメンな」
「――へ?」
三人の側をスルスルとすり抜け立ち去る俺を見て、あぜんとした表情を浮かべていた。
俺はというと、そのまま歩いて止まることなく駅とは逆の方向に歩き出す。
まあ、簡単なこと。ただ単純に縛っていたロープを切っただけ。持っていたカッターでな。
「な、何で……?」
未だ信じられないのか動かない少女達を尻目に、俺は大学近くのバス停に向かう。
電車は出てしまったし、人目もまあ集まってしまった。速やかに家に帰った方が安全安心だしな。それに、いつ反撃してくるのかもわからない。
というわけで、俺は退散させてもらうよハッハッハ――なんて、思っていたら。
「待てコラ――!」
「やっぱり!?」
我に帰った奴らが、俺の元へと一目散に走り出しやがりました。まだやるのかよ、鬼ごっこ。
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