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ウンザリしながら走り出そうと角を曲がって数秒後。
――!
身体に走る突然の悪寒。そして脳内に弾ける映像の数々。
ラグは数秒。考えてる時間さえ惜しい!
「くっ――!」
条件反射のごとく身体を翻し、今度は俺が少女達へと走り出す。
時間がない――!
「逃がさないわキャアッ!?」
「イヤッ!」
「ヒィッ!」
角の所で衝突してきた少女達を何とか受け止め、そのまま駅へと押し戻そうとするが。
「この、ナメンじゃないわよ!」
「ハアッ!」
「オリャアッ!」
何を思ったのか分からないが、全身全霊で俺を押し返してきた。オイ――!
「ば、バカ野郎! 押すな!」
「じゃあアンタが押すな!」
ああ、もうまどろっこしい!
「良いから言うこと聞け!」
ズルズルと少女達を押し戻す。これで何とか――
「大体何なのよアンタは! さっ――」
奴の発した声の続きは、唐突に遮られた。
奇妙な音を鳴らしてトラックが横転。派手な衝撃音が響き渡り、設置されていたガードレールからその他諸々をひしゃげさせ、破壊して、ようやく動きが止まる。
言うまでもなく、まさに紙一重という差だった。もし、あのまま少女達を押し戻せなかったなら、間違いなく俺達は全員巻き込まれていただろう。
辺りは騒然としている。悲鳴と怒号が錯綜する中で、俺達はただ静かに、この場だけ時が止まったような形で呼吸を繰り返し続けていた。
「大丈夫か?」
努めて優しく声をかけ、呆然と震えている少女達がどこかを怪我していないか、確かめる。
押し戻す際の、仕方なしに抱き止めた行動については、どうやら不問のようだ。助かる。
見た限りは、特に外傷は無い。良かった……。
「大丈夫かい!?」
近くに来た近隣住民の方々が、動かない俺達の元へと歩み寄って無事を確かめてくる。
それに心配ないと返し、少女達を預けてその場を去ろうとして。
「――ッ!」
激痛が身体を襲う。思わず膝を折りしゃがもうとするが、それも出来ない。崩れた体勢で地面へと倒れ込んだ。
「しっかりしな! 救急車を!」
意識を失う最中。俺は自らの爪の甘さを悔やんでいた――
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