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「変わりないですね。安静にして早く治しましょう」
「はい」
担当医師からの診察も終わり、俺はベッドに再び寝転がった。
あの後、俺は大学病院に運ばれ一命をとりとめた。といっても、病状は大したことじゃなかった。足の骨折と、それに伴う全身への激痛が主。もしこれ以上だったら何のために苦労したかわからん。
事故を起こしたトラック、その原因は荷物を許容量を越え載せた事らしい。幸い、怪我人は俺一人だったとか。何にせよ皆が無事で良かったさ。
ただ――
『誠に残念です』
厳しいながらかなり良い線まで行っていた会社の選考に行けない状況は、流石にこたえたけどな。
これでまた一つ、就職先が消え採用への道が狭まったわけだな。まあ、仕方ないか。
と、一人寂しく黄昏ていると。
「――あの」
「ん――えっ?」
入口から聞こえてきた声に顔を向け数秒、豆鉄砲を喰らった鳩のごとく面食らっていた。
そこにいたのは俺と鬼ごっこを繰り広げた少女。しかも一番嫌なあのツインテ美少女だった。
思わず冷や汗が額を流れ出た。何でここに来たんだ? まさか、動けないのを良い事に、今度こそ俺を社会的に抹殺するとか!?
ま、待て、頼むから落ち着け。俺はまだ死にたくないんだよ! 嫌だ、嫌だ!
身体を震わせ怯える俺を横目に見ながら奴はベッドの側にやって来ると、こちらに顔を向けて身体を折り。
「――ごめんなさい」
「……へ?」
謝った。もちろん俺に対して。予想が外れた俺は、動きを止めて固まる。
「その、私がちゃんと言うことを聞いてたら、アンタが怪我なんてしなかった訳だし」
ん? あ、そっちか。どうやら俺の怪我の責任が自分にあると。それで謝っていると。
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