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ある女が本屋で「東京タワー」を盗もうと企んでいた。
ある女とは中学二年生の渋木杏。
こいつの趣味は万引き。
そんなことはともかく。
杏は本屋に到着した。
そしと大胆に「東京タワー」を取り上げ走り去ろうとした。…が!
案の定、店員のおやじは杏に目をつけていたらしく
杏はすぐに声を掛けられた。
「また、お前か。懲りないな~!」
そう!馬鹿な杏は同じ店で万引き何度も繰り返していた。
だから、おやじは
杏の顔を忘れもしなかった。
「おじさん。ゴメンなさい…。」
そう杏は申し訳なさげに言った。
「本当に反省しているなら、何度も万引きなんてするもんか!さぁ、店の事務室に行こう…か。」
おやじは杏が持っている本を見て一瞬止まった。
「お、お前『東京タワー』が読みたいのか?」
おやじは焦りながら言った。
「う、うん。」
杏は、すかさず言った。
「お前、本当は良い奴なのかもな。ちょっと、おじさん嬉しいよ。こんな良い本読みたいって言ってくれて。な、なんか面倒臭いし警察には言わない。今日は見逃してやるよ。お前、金がないのか?」
おやじは照れ臭そうに言った。
「お金…ない。」
杏は、うつむき加減で言った。
「ちぇっ!しょうがねーなぁ!じゃあ、特別に貸してやるよ!ちゃんと返してくれるよな?」
おやじは満面の笑みだ。
「ほ、本当!?うん!絶対返す!」
杏も、おやじに負けず劣らず満面の笑みだ。
「よーし!ほい!」
おやじは本を渡した。
「やったーー!!おじさんありがとう!!」
そう言うと杏は嬉しそうに走っていった。
杏の後ろ姿を見て微笑むおやじの目はとてつもなく輝いていた。
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