第一章

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父と暮らし始め、毎日は前より平和だった。 ただ少し違うのは、父には新しい伴侶ができたこと。 つまり私の新しいお母さんだ。 「閑梛ちゃん、ご飯は?」 私が帰宅すると彼女は問いかける。 「ごめん、食べてきた。」 「そう…。」 彼女は私のために一生懸命尽くしてくれる。 私が母のもとでどんな仕打ちをされたか知っているからだ。 昔の母のようにとても優しい。 「オギャァァアア!!」 「あー、はいはい、今行くよ。」 彼女は小さな赤ん坊のもとへかけよる。 半年前に父と彼女の間に出来た新しい命。 つまり私の妹にあたる。 彼女は優しく抱き抱える。 私はそれを見て嫉妬のような感情が芽生える。 息がつまる。 自室に駆け込むと腕を切る。 うっすらと赤い線が出来る。 死ぬつもりはあまり無い。 だから傷もあまり深くない。 ただ、自我を保つためだ。 いつまでこんな生活を続けるのだろうといつも思う。 自分の未来が見えない。
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