雨が降る前に

4/14
前へ
/253ページ
次へ
「…私、ちょっと用事があるから」 「えー?つぐみ、行かないの?」 「…後から行くね」 そう言って友人たちの輪に背を向けて、1人で来た道を戻り始める。 階段を上り、2つの校舎をつなぐガラス張りの通路をひたひたと歩く。 どんよりとした空がガラスの向こう一面を覆っていた。 開け放された窓から入り込む湿った生温い風に、髪がなびく。 どうして今日なのか。 どうして今なのか。 そんな理由は自分でもわからない。 ただ、行くべきだと直感で思った。 この目で、確かめるべきだと。
/253ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1749人が本棚に入れています
本棚に追加