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鷹守さんは部屋の奥に歩みを進めて、真っ白なレースのカーテンを開けた。
「窓はできるだけ開けるな。必要以上開けると防犯ベルが鳴る。」
「…ぼうはんべる…。」
口の中でつぶやいてみるけど、ピンとこない。
「ちなみに屋敷の廊下にも、至る所に監視カメラがあるからな。おかしな事は考えるな。」
「…かんしかめら…。」
防犯ベルにしろ監視カメラにしろ、今までの私の日常生活の中で関わったコトがない。
ついつい棒読みになる。
鷹守さんはしばらく窓の外を見てたけど、やがてピンクのバラに目を落として言った。
「…俺は認めてない。お前が雅の婚約者だなんて。」
ぽつりとつぶやいたその言葉は、ゾクリとするほど冷ややかな響きだった。
こくりと喉を鳴らしてから、おずおずと尋ねる。
「あの、婚約者ってどういうことですか?…暁さんには家政婦としてって。」
「暁がそう言ったのか。」
「……?」
クッと口の中で笑う鷹守さん。
小さく何度か頷いて、何かに納得したようだった。
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