9901人が本棚に入れています
本棚に追加
しばらくそうしてボーッとしていたら、軽いノックの後、すぐにドアが開いた。
「ひゃっ!?」
体勢を立て直すのが間に合わなくて、そのままドアと一緒に後ろに倒れそうになる。
「うわっ!?」
その声と共に、ガシッと私の両肩を掴んだのは雅さんだった。
「ビックリした…。」
「…どうも…すみません…。」
ホッと安心の息をつく雅さんと、その顔を見れないまま背中越しに謝る私。
ふわりと雅さんの香水が香った。
雅さんは私をちゃんと立たせると、クスッと笑ってから部屋の中に入ってきた。
「お茶、淹れようか?」
「あ!!じゃあ私が!!」
慌てて部屋の奥のティーセットの方に向かう。
雅さんは微笑みながらソファーに腰かけ、足を組んだ。
動作がいちいち優雅すぎて、思わず見とれそうになる。
しばしの沈黙が流れて、私がお茶を淹れる作業の音だけが響いた。
色々聞きたいことはあったけど、家政婦という職業上、ご主人様の家族に対して自分から尋ねることに抵抗があった。
最初のコメントを投稿しよう!