* 玉の輿の「た」すら見えない頃

15/69
前へ
/921ページ
次へ
そもそも自炊らしい自炊をしないんだろうなって感じで、カップ麺とかレトルトの袋が一杯だった。 鍋は小さな片手鍋が一つだけ。 …コレだけですかい? もしかして実はメッチャ貧乏とか? 2倍の給料を払ってまで、住み込みで家政婦を雇う余裕はあるのに? 何かよく分かんないって思うけど、家政婦はあくまでただの家政婦。 ご主人様に対する余計な詮索はタブー。 それから色々したいことはあったけど、とりあえず晩ごはんを作ることにして、冷蔵庫を開けた。 そしてピタッと固まる私。 「……。」 …そうか、そうだよね。 このキッチンを見た時に察するべきだった。 冷蔵庫の中は見事に空っぽ。 調味料すらなかった。 時刻はもう6時になる所。…ヤバイ、急いで何か作んないと。 書斎の東條さんにドア越しに声をかけた。 「すみません、ちょっとスーパーに買い物に行って来ます。」 「スーパー?…あぁ、そうかそうか、申し訳ない。最初に何もないって言っておくべきだった。」 はたと思いついたような声を出して、東條さんがわざわざ書斎から出てきてくれた。
/921ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9894人が本棚に入れています
本棚に追加