* 玉の輿の「た」すら見えない頃

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「あ、いいえ。確かスーパーはそんなに遠くないはずですし。…それよりあの、もう少し我慢できますか?お食事。」 東條さんがニッコリ笑った。 「今日はもういいさ。何か出前を取ろう。春芽さんは何が食べたいかな?」 「え!?そんな!?…というか、お作りするのが仕事なので。…出前を頂く家政婦なんて聞いたことないですし。」 驚いて、目の前で両手をブンブンと振った。 「いいんだいいんだ。明日からちゃんとお願いするから。…そうだ。今日は引っ越し祝いということでソバにしよう。ウン、ソバがいい。」 「あの」 「ソバならやっぱりあそこの店がいいな。ウン、あそこにしよう。」 「私作りま…」 「春芽さんはソバは好きかね?」 「や、あの」 「ざると温かいのだと、どちらがいいかね?」 「……。」 「ちなみに私のおススメは鴨南蛮だよ。あそこのは絶品だ。」 「…じゃあ、それで…。」 「ウンウン、よーし。鴨南蛮2人前だな。」 嬉しそうに電話をかけに行った東條さん。
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