* 玉の輿の「た」すら見えない頃

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…どうしたって聞く気はないのね? また自己完結ですかい。 っていうか、電話も自分でするんですかい。 …あの、ワタシ家政婦としてココに来たんでしたよね? 廊下でポッツーンと、何とも言えない気持ちのまま立ちつくしていた。 東條さんが頼んでくれた鴨南蛮ソバは、本当に美味しかった。 そもそも自分以外の人の料理を食べるのが久しぶりだし、誰かとテーブルを挟んで食事することも相当久しぶり。 ふと田舎のばあちゃん達を思い出して、懐かしくて感動してしまった。 その日の夜、派遣事務所に電話したら、所長のオバさんが至って軽い口調でオソロシイことを言った。 『あー、沢口さんねぇ、何か依頼主さんがすごく気に入ったらしいから、もう直接雇用の契約しちゃうって。夕方くらいにソチラから連絡あったわよ?よかったわね。』 「……は?」 『沢口さんの荷物はソチラにお送りしていいって伺ったから、もう宅急便で送ったわ。早いうちに欲しいでしょ?』 「……今、何と?」
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