* 玉の輿の「た」すら見えない頃

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『ウチの契約解除の書類も入れといたから、届いたらハンコ押して送り返してね?』 「…あの、聞いてないんですけ…」 『短い間だったけど沢口さん、若いコの割にはよくやってたと思うわよ?沢口さんならドコででも大丈夫よ。これからも頑張ってね。じゃ。』 「あっ、あの!!」 ツーッ、ツーッと、既に電話は切れてる。 ……何ですと? 言いたいことだけ言って切れてしまったケータイを見つめつつ、私の頭の上に「?」マークが3つくらい、ポンポンポンと浮かんだ。 …今、何かとってもアリエナイことを言われた気がするんですけど? 本人の承諾なしに、勝手に契約が変えられてた気がするんですけど? …気のせい? 次の日、東條さん宅に届いた宅急便を見て、前日の電話はどうやら本当だったらしいと理解した。 中には所長のオバさんが言ってた通り、私の荷物と書類が一式。 ご丁寧に返信用封筒までついてた。 東條さんに契約のことを聞いたら、『春芽さんにとって契約先が変わっただけのことですよ』ってニッコリ微笑まれた。 『諸々の面倒な手続きも何も心配しなくていいから』って、ニッコリと…。
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