* 玉の輿の「た」すら見えない頃

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いつもいつも、やっぱり新しい派遣先ってのは緊張する。 家政婦っていう職業上、派遣先がチョイチョイ変わるのは当たり前のことなのに、この緊張感には一向に慣れられない。 今回の派遣先は、独り暮らしのおじいちゃん。 ちょっとした研究職をしてるんだそうな。 ちなみに、家政婦を利用するのは初めてだってさ。 …いい人だといいな。 カタブツでガンコな人だったらどうしよう? まぁ、私は私の仕事を頑張るだけなんだけど。 派遣所から渡された地図を頼りに辿り着いたお宅は、雑草ボーボーのお庭の質素な平屋。 玄関のガラスなんてちょっと割れてて、段ボールで塞いである。 見た瞬間、もう一番にやるべきこと見つけちゃったよって感じ。 「ごめんくださーい。」 チャイムもないので、玄関を開けて直接声をかけた。 案の上というか何というか、返事は返ってこず、開けた瞬間、廊下のアチコチに山積みの本が目についた。
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