* 玉の輿の「た」すら見えない頃

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季節は春がもう終わり、やがて暑い夏がやってくる。 東條さんはもうすぐ大学がテスト期間に入るから、これからはちょっと忙しいって言ってた。 その日は、本格的に暑くなる前には庭をどうにかしたいと思って、庭の草むしりをしていた。 それにしても今日はあっついわー、なんて思いながら草刈鎌を動かしていたら、急に自分のいる場所が日陰になった。 そして私の視界に入ってきた、ピカピカの男物の革靴。 「住みついたネコはコレか。」 ……え?ネコ? 突然落とされた低い声に、まず見上げるよりも前に固まった。 もしかしてそのネコって私?って思いながら顔を上げようとしたら、また別の声。 「タカ、そんな言い方するなって。怯えるから。」 今度は何だか優しい声だ。 見上げると甘い微笑みを浮かべた男性。 …とその隣に、容赦なく冷たーい目で私を見下ろしてる男性。 さっき私を『ネコ』って言ったヒト、コッチだな。 それにしてもどっちもスゴイ美形だけど、タイプが全然違う。 1人は優しげで柔らかい感じ、もう1人は全然笑わなそーな無機質な感じ。 …はぁ、こんな対照的なのに、どっちも激しくイケメン。
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