* 玉の輿の「た」すら見えない頃

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「サワグチ ハルメ さんね。」 優しそうな方の人が言った。 「…な、何で名前…?」 イキナリ自分の名前を言われてちょっと警戒した。 今度は冷たそうな感じの人が無表情のまま言った。 「過疎化が進んだ地方生まれの地方育ち。19歳。高校卒業後すぐに上京し、伊東派遣事務所に就職。家政婦としての経験は浅いものの、勤務態度は真面目で評価も良し。」 「…何なんですか?アナタ達。」 まるでどうでもいい書類を読み上げるように私の経歴を語ったその失礼さに、ムッとして思わず声が尖った。 けれども無表情の彼は、そんな私なんかお構いなしに眉一つ動かさずに続けた。 「祖母と兄の3人での地方暮らしから一転、都会で初の1人暮らし。…裕福な環境ではないな。」 「…地方地方って!!…だから何なんですか!?」 さすがにムカッときて、ガバッと立ち上がって睨んだ。 ソイツは私を冷たく見下ろしながら、片眉を上げただけだった。 「ド田舎って言った方がいいか?」 「……!!」 …何コイツ!? アッタマくる!!
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