* 玉の輿の「た」すら見えない頃

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こめかみにピクッと青筋がたった気がしたけど、笑顔のまま拳をギュッと握り、小さなイヤミをチクリと言ってやった。 「大変無口な方でいらっしゃるんですね。」 鷹守さんは目線すら合わせずに、サラッと言った。 「野良猫に名乗る名などない。」 「……。」 …コイツ…。 一回殴りたいんですけど。 「もー、タカ、何でお前はいつもそうなの。…ホントにゴメンね?春芽サン。」 バシッと鷹守さんの肩を叩いてから、雅さんがすまなそうに謝った。 雅さんのサラサラの黒髪が初夏の陽に眩しい。 優しい笑顔といい、チラリと見える白い歯といい、爽やかなガムとか清涼飲料水とかのCMができそう。 「…イエ…。」 気を取り直して笑顔を取り繕った。 すると、鷹守さんがジロリと私を睨みながら言った。 「わきまえろよ。」 …何? もしかして今、クギ刺された? 雅さんに見とれてんなよって? …んなコト分かってるって!!
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