* 玉の輿の「た」すら見えない頃

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「…雅様、旦那様にお伝えして参りますので、このまま少々お待ち下さいませ。」 私はイラッとした気持ちを押し殺すと、完璧な営業スマイルを作って、雅さんに向けて言った。 あえて雅さんの名前だけ言って、鷹守さんを一瞥もしなかったのは小さな反抗の表れ。 …自分だって秘書のクセに雅さんに不躾な態度じゃん!! ホント、何でこんなヒトが秘書やってんの!? 「『様』はいいよ。俺も『春芽ちゃん』って呼ばせてもらう。」 優しい雅さんの笑顔と声に、ちょっとダークになりつつあった胸の中がすうっと浄化された。 ホッとして自然な笑顔がこぼれた。 …ホントにいい人そう。 「…では『雅さん』と呼ばせて頂きます。」 鷹守さんがフンと鼻で笑った。 「早速呼ぶ辺りが図々しい。」 「……。」 「タカ!!」 …鎌で刺してもいいですか? イヤ、ここは刺しとくべきだよね?
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