* 玉の輿の「た」すら見えない頃

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「どうした?」 鷹守さんの後ろから、ヒョコッと雅さんが顔を出した。 私達を見てすぐ優しい笑顔になる。 「タカ、また何か怒らせてる?」 「……。」 鷹守さんはしれっとしていて何も答えない。 その態度にもイラッときたけど、どうにか抑えて穏やかな表情を作った。 「雅様は夕食どうされますか?食べていかれるようでしたら、雅様の分も、ご用意致しますが。」 『雅様の分も』だけを強調して、鷹守さんを見ないようにして笑顔で尋ねた。 我ながら大人気ないけど。 そしてさっき鷹守さんにイヤミを言われたから、ちゃんと『様』を付ける。 ブフッと雅さんが吹き出した。 「ほら、怒らせるから。タカのゴハンはないって。」 「……。」 私の稚拙な反撃に、鷹守さんもちょっとイラッとした表情で私を睨んでる。 「春芽ちゃんいいねぇ、タカに反撃するヒトってそうそういないから。」 雅さんがハハッと声を立てて楽しそうに笑った。 鷹守さんが忌々しげに言い捨てた。 「猫は家猫に限るな。」
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