* 玉の輿の「た」すら見えない頃

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夕食は3人+私の4人で取った。 私は3人と一緒なんてゴメン、…イエイエ、遠慮したんだけど、東條さんがどうしてもって言うから仕方なく加わった。 そのやり取りの一部始終を聞いてたクセに、鷹守さんは席に着いた私に向かって言い捨てた。 「主人と一緒に夕食を取る家政婦がどこにいる?」 ムカッときたけど、笑顔を取り繕って答えた。 「そのご主人様のご命令なので。」 鷹守さんはムカつく横目で私をチラリと見てから、自分の夕食の皿に目を落とした。 「味が薄すぎる。」 「旦那様のお身体に合わせた味付けです。お口に合わなければどうぞ残して下さって構いませんから。」 『アンタの為に作ったんじゃないのよ』と、挑戦的な笑顔で鷹守さんを見る。 鷹守さんはそんな私の顔をまたチラリと見てから、鮭のムニエルを口に運んだ。 「それぞれに合わせた味付けをしてこそ、プロの家政婦じゃないのか?」 「…申し訳ありませんでした。突然お見えになるとは伺ってなかったものですから。初対面で味の好みまでは伺えませんし。」 『突然アポなしで来たソッチが悪いんでしょ』って言ってみる。
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