* 玉の輿の「た」すら見えない頃

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私達のやり取りの向こうで、東條さんと雅さんが必死に笑いをこらえてる。 「臨機応変を知らないのか。…応用力を殺すゆとり教育の賜物だな。」 「人を怒らせない話し方は習ってるんですけどね。」 『アンタこそ一回小学校に戻って、口の利き方を習い直してきた方がいいんじゃないの?』ってね。 鷹守さんがクッとバカにしたような笑いを漏らした。 「なるほど。上手いこと主人を口車に乗せるスキルだけは持ってる訳だ。」 「…何ですか、それ。」 カチャンとフォークを置いて、鷹守さんを見つめる。 悪意が伝わるその言い方に、もう笑顔でなんていられない。 若干の睨みが混じる。 「野良猫はいいエサをくれる主人に懐くからな。…近頃の野良猫は鼻が利く。」 「さっきから野良猫野良猫って…。私が何だって言うんですか?」 鷹守さんもフォークを置いて、こちらを見た。 冷たい瞳。 「…気付かないとでも?」 「……?」 鷹守さんの言葉の意味が分からなくて、本気で眉間にシワを寄せた。
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