* 玉の輿の「た」すら見えない頃

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「そこまでだ、鷹守くん。言い過ぎだ。」 ぴしゃりと東條さんが厳しい声で言って、ちょっとビックリした。 「タカ、春芽さんに謝れ。」 雅さんも固い声で言った。 雅さんがあえて『春芽さん』と呼んだ所に、ほんのり緊張感が漂う。 鷹守さんはチラリと私を見てから、「すまない」と抑揚のない声で言った。 感情がこもってない言い方にまたイラッとくる。 「…よく聞こえませんでした。…今何とおっしゃいましたか?」 ホントは聞こえてたけど、ワザと聞こえないフリをしてやった。 ブハッと雅さんの吹き出す声。 東條さんも苦笑してた。 鷹守さんは眉間にシワを寄せて私を睨んでるけど。 …こんな冷血人間になんて負けるもんですかッ!! それからの夕食の席で、雅さんと鷹守さんは幼なじみだというコトを知った。 …だから雅さんに対してあんなに無礼な態度だったワケね。 確かにさ、フツー秘書があんな態度だったらクビだよね、クビ。 まー、それにしても雅さんも甘いなって思うけどさ。 もっとビシッと躾けた方がいいですよ?『番犬』として。
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