* 玉の輿の「た」すら見えない頃

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「これはこれは、先に名乗らず失礼しました。東條 静(とうじょう しずか)と申します。シズカを詠むものは色々ありますが。 …大空を 静かに白き 雲はゆく 静かにわれも 生くべくありけり。」 「あ、どうも…。」 再び握手に応えつつ、微妙な笑みを浮かべた。 …何?和歌好き? そんな和歌、全然聞いたコトないんですけど。 研究職ってもしかして文学系かなぁ? こりゃヘタな日本語使ったら叱られるかもしれないぞ、と淡い不安を抱きつつ、靴を脱いで上がらせてもらった。 「失礼致します。」 「コレコレ、『失礼致します』じゃないよ。」 「え?」 …マサカの今のたった一言で!? 思わず身を固くしたら、東條さんはハハッと人のよい笑顔を向けた。 「これからは春芽さんの家でもあるんだから、そんな他人行儀な。」 「…え?あ、はぁ…。って、えぇ!?」 思わず東條さんを二度見した。 …何でイキナリそーなるの!? っていうか、そりゃ依頼先が住み込み希望ってのは聞いてたけど、でもソレって、やってみて双方が納得したらじゃなかったっけ!?
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