* 玉の輿の「た」すら見えない頃

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笑顔を貼り付けたまま、たらーりと冷や汗が背中を伝う。 「住み込んで頂けるなら、給金は提示額の2倍お出ししましょう。」 …なぬ!? 「やります!!」 途端にキリッとした顔を作る私。 それからゲンキンにも、ニコッと可愛らしい営業スマイルを作る。 「精一杯頑張ります。」 東條さんはニコニコと頷いた。 …そりゃーさ、イロイロ突然すぎるけど、2倍もお金がもらえるとなると話は別だわ。 どうせ元々1人暮らしで身軽だし。 何かアヤシそうだけど、老人が若い娘をダマすとかって聞いたコトないし。 逆はあるかもしんないけど。 …ヨーシ、やってやろうじゃないの。 完璧に家事をこなしてやろうじゃないの。 …別に単純ってワケじゃないのよ? 正直なだけですから。 キラリと目を輝かせた私を見て、東條さんはおかしそうにアッハッハと笑った。
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