* 玉の輿の「た」すら見えない頃

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さっき奥で大きな音を立てて倒れたのは、どうやら書斎の椅子だったらしい。 そもそも床に散らばった書籍や古新聞とかが多すぎて、椅子自体がマトモに置かれてなかったっぽい。 加えて、よく分からない模型とか積み木とか、オモチャみたいなのも転がってる。 「…うわー…。」 書斎に入って思わず口をついて出た言葉に、東條さんがハハッと頭を掻いた。 「ゴミはないはずなんですよ。ただモノが多いっていうかね。」 「全くですねぇ。」 私が恐る恐る足を置く場所を確かめるようにして部屋に入ると、東條さんは倒れた椅子を立てて、よっこいしょと腰を下ろした。 椅子の足が新聞紙の束を踏んだままのせいで、微妙にバランスが傾いている。 東條さんはそんな斜めになった椅子なんて気にもしない様子で、そのまま机に向かった。 机の上もゴチャゴチャしてて本当に乱雑、雑多。 家政婦としての血が騒ぐなんてもんじゃない。
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