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──成神 士騎(なるかみ しき)。
中学時代によくつるんでいた男友達だ。すべてが、普通だった俺の友達とは思えないくらいに、コイツは成績優秀。運動神経抜群。
それに加え容姿端麗ときている。非の打ちどころがない。まさに完璧人間だった。今、考えてもフツメンだった俺が友達やっていたなんて不思議でしかたない。
「あれ、確か…士騎くんも同じ高校じゃなかった?」
「ん?そうだけど?」
「じゃぁ、ちょうどいいじゃないの!士騎くんに学校でサポートしてもらえば、姫乃ちゃんの不安だってなくなるよ!」
「それだけは…ぜっっったいに!嫌だ!」
楓さんの案を即答で蹴散らす。
「えぇ~なんでなんで!?」
「嫌なのは嫌なの!アイツだけには、こんな姿見られたくないし、知られたくもないの!!」
「じゃぁ、学校で困ったりしたらどうするの?」
「そ、その時は…その時に考える」
「結局のところは、あまり考えてないってことでいいかな?」
「ぐぅ…」
何で、こういう時だけは勘が鋭いのかわからない人だな…。
「まぁ…姫乃ちゃんが、それでいいなら良いんだけど。私的には、いいアイディアだと思ったのにな~」
「あ~もう!この話は終わり!終了!帰ってのんびりする!」
スタスタと歩き出す俺を追いかけるようにして、楓さんがやってくる。
「あ~ん。待ってよ~」ギュー
「って!なんで腕にしがみ付いてくるの!?」
「え~だって、今日は私と姫乃ちゃんは姉妹だもん!」
「はぁ…歩きづらいんだけど?」
「我慢するのッ」
俺たちは仲よく腕を組む。本当の姉妹のように。
そういえば…士騎の奴。今はたしか田舎のばあちゃんの家に帰省してるんだっけ?卒業式なんかで聞いた気がする。お土産もってきてやるとか言ってたし…まぁ、アイツとも高校じゃ、もう話すことはないだろうけど…。
少し寂しさと楓さんの体温を感じながら、俺は帰路についたのだった──
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