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キッチンに向かう楓さんを横目に俺は内心、どうしようかと悩んでいた。殴るな男口調をやめろ。簡単にいってしまえば、もっと女らしくしろって事なんだろうけど…。
「どうしたものかな~」ハァ…
もちろん、楓さんには聞こえないように小声でつぶやいている。いきなり、女口調をしろって言われても、どうしていいのか分からない。
「そういえば…ちょっと前に楓さんに無理やりに見させられたアニメのキャラの口調をマネすればいいんじゃ…」
自分で考えようとするから、悩んじゃうんだよ!何かを参考にしたほうがやりやすいし、勉強にもなりそうだ。そうと決まれば、早速だな。
「え~っと…確か、この辺にあったような。あ~あった、あったこれだ」
萌え系のパッケージのDVDを発見。それをデッキに入れるとアニメが始まる。
「さてと、あとはこれをマネすれば…」
俺は、約1時間半。ずっと画面をみては、巻き戻してはリピートを繰り返し、その口調を何とかしてモノにしようと努力した。
*
ピ~ンポ~ン ピ~ンポ~ン
──と、家の呼び鈴がなり来客者を知らせてくれる。
「楓さ~ん。お客だよ~…って、あれ?どこか行っちまったか?」
先ほどまで、後ろのキッチンで仕事をしてたのにいつの間にか消えている。俺がアニメに集中している間に、どこかへと行ってしまったようだ。
「ったく、誰だよ…人が集中している時に…って、やっぱり口調って急には直せねぇーんだな」
気が抜けているってか、意識しないと男口調の方がとっさに出てしまう。ま、それもそうだろう…なんせ、俺は15年間ずっとこの口調だったんだしな。少しずつ直せばいいか?
ピ~ンポ~ン
来客者からの催促の呼び鈴だ。
「はいはい…今開けますよ~」ガチャ
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