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「すみません、お待たせしました」
「おう。って、別に待ってないけどな」
「そ、そうですね」アハハ・・・
確かに、士騎さんの言うとおりである。呼び鈴を押されてすぐに出てきたのに『お待たせしました』は変だよね。
「それじゃ…道案内よろしくお願いします」ペコリ
「あぁ。別に難しい道じゃないし、すぐに覚えられると思うぞ。それにお前に道案内をするのは、これで二回目だしな」
「え?そうだったんですね。何だか申し訳ないような…っ」
「気にするなよ。困ったときはお互い様だ。それより、早く行こうぜ?早く出た意味がなくなっちまうぞ?」ニコリ
「──!!」ドキ
「ん?どうかしたか?なんだか顔が赤いけど」
「い、いえ!別に何でもないんです!」
「そっか?ならいいけど。体調が悪いんなら早く言えよ?」
何だろう。先ほどの彼の屈託のない笑顔を見た途端に胸が…締め付けられるような感覚。だけど…心地がよかった。
それに、彼の…士騎さんがあんな風に笑いかけてくれたのを初めてみたかもしれない。いつもは、目もあわせてくれなかったし…もしかしたら、今日は機嫌がいいのかも。なら、謝るのは機嫌がいい内がいいよね?
心地の良い雰囲気と謝るタイミングを見計らいながら、あたしは足を踏み出していく。
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